講演の記録

ホルモン剤の服薬あれこれ


谷澤:私はピアサポートをしている中で薬剤師さんに相談できたらいいのになと思う時がいっぱいあるのですが、薬剤師さんって近くにいるのに何か遠い存在な気がしませんか?

百村:そう、化学療法が終わったら遠くなりましたね(笑)

原田:どうしてもホルモン剤は院外になっちゃうし。ただ何か疑問があったらいつでも来ていいですよと自分は言っているけど、それで来てくれる人はそんなに居ないかもしれないですね

吉田:確かにそれは重要で、ホルモン療法になってくると今まで外来化学療法室で点滴の間に関わって来た人たちとのコンタクトが取りにくくなるっていうのはありますね。ホルモン療法の難しさにはそういう側面もあるのかなって思います。

原田:病院にも薬局もあるので院内の薬剤師にも話しは出来るし、特にがんに関しては院内と院外の薬剤師の連携積極的に行っている分野です。院外の薬剤師もがん領域の認定・専門薬剤師の資格がとれるので一生懸命勉強して頑張っている人もいっぱいいます

谷澤:ホルモン剤を処方されている患者さんは、お薬を貰うのはずっと同じ薬局なんですか?

原田:本当は全部の薬を一括で管理した方が、薬の飲み合わせや同じような薬が重複していないかが確かめられるので、行きつけの薬局を一ヵ所にした方がよいとは思います。
でも医療情報のデジタル化が進み、どこの薬局に行っても患者さんの情報が見られるようになれば一ヵ所に決めなくてもいいのかも知れませんね。
「かかりつけ医」のように信頼のおける「かかりつけ薬剤師」も作って欲しいです。
恐らく皆さんは薬局に行くのって医者にかかるのとは違う感覚でしょ?それがアメリカやカナダでは、薬局で薬剤師が予防接種を打ったり、血糖の管理を行ったりすることもあり、医者にかかる感覚で薬局に来ると聞いたことがあります。今後、日本の薬剤師・薬局もそういう風になるかもしれません。

谷澤:なるほど。かかりつけ薬剤師を作れば、主治医までは届かないような小さい副作用や悩みも解決に近づけるかも知れないってことですね。

原田:現在、テレフォンフォローをしている薬局もあります。例えば抗がん剤の副作用が出る時期に患者さんに電話をかけ、体調を聞いて必要であれば受診を勧告したりしています病院薬剤師は、のみ薬になるとどうしても身近で様子を知ることが難しくなるので、かかりつけ薬剤師連絡をしていただき、症状を伝えどうしたらいいかを聞いてみるとよいと思います。医者と同じで良い薬剤師に出会えたら、もっと安心して薬物治療が受けられるようになると思います。


谷澤:百村さんは約一年間、ホルモン剤を処方されていますが同じ薬局を利用していますか?

百村:それがその時によって違います・・・。待ち時間が長い日は、今回は同じ薬を扱っている他の薬局でいいかな、と思ってしまいますね。

吉田:そうなんですか!?患者さんはみんな常に同じところに行っているものだと思ってました。

百村:同じところに行きたいのですけどね。最初は抗がん剤含めて同じ薬局で顔見知りの薬剤師さんも出来て一ヵ所だったですが、その日によって待ち時間が1時間、1時間半と長くなってしまって。時間をつぶせる所があれば良いのですが、その後の予定があり待てない日は他の薬局に行ます。
ただ、
その薬があるか言われると、ある程度は診察を受けた病院の近くの薬局になります在庫不足だと数日後に再度薬局に行くことになってしまいますし。

谷澤:薬局に「○○病院のお薬を扱ってます」ってよく書いてありますが、無い時もあるのですね。

原田:調剤はどこの病院の処方箋も断っちゃいけないのですがその時に薬の在庫があるかは話しが別なんです。

吉田:なるほど。いままで薬を受け取るのは待ち時間が長くても同じところってイメージでした。

谷澤:在庫不足で数日後に受け取るというお話がでましたが、ホルモン剤の処方のタイミングは、飲み終わりとピッタリ合いますか?

百村:ピッタリ終わるか何日か飲まない日ができた時もありました。

谷澤:飲めない日が数日あった時はどうされましたか?

百村:そうですね、一回休薬した時は次の受診までの日数に対して薬の数が足りなくて等間隔で服用するにはどうしようかと考えて3日に1回飲んでいた期間がありました。それを主治医に報告したら、毎日飲む薬だから日を空けて飲んでも意味がない!って(泣)

飲み続けていると1日飲み忘れる日もあります。几帳面な人は薬のシートに日付を記入して飲み忘れを防止していると聞きます。
あと、服薬の時間も、私は朝食後に飲んでくださいと言われていますが。同じ薬でも夕食後に飲んでと言われている人もいます。

吉田: 僕はタモキシフェンなどの内服ホルモン剤の時は、どの時間に飲んでもいいよって言ってますね。



谷澤:1日飲み忘れたりすると、不安になられる方もいらっしゃると思うんですがそれは特に問題ないですか?

吉田:誤解を恐れず言えば1日くらいは問題ないと思っていますけど、1日飲み忘れたからって次の日2錠は飲まないでね、って説明しています飲んだかどうだか忘れてしまったときも、飲み忘れた(と思っている)分も合わせて飲むと血中濃度の問題等があるので「飲んだかどうだか覚えてないときは、忘れたからもう1錠飲もう、は絶対しないでスキップしてください」と言っています。

谷澤:手元の薬が不足しないように受診の予約をされているとは思いますが、様々な事情で次の受診までに薬が足りない時はどうしたらよいでしょうか?

吉田:僕は2週間分くらいは必ず手元に残るように処方して、飲まない期間が出来ないよう調整しています。だって誰でも急に受診に来れなくなる時ってあるじゃないですか。
高価な薬でないなら、足りなくて不安になるくらいなら少し余裕がある方がいいと思っています5年も10年も飲む薬ですしね。
そして薬を無駄にしないように、もし5年予定の薬を4年半内服して次の外来で処方が最後となる時には、残りが何錠あるか確認をしてきっちり終わるように帳尻を合わせています。

谷澤:なるほど、数日分多めに処方してもらうと安心ですね。もし手元に薬がなくなってしまった場合に、飲まないでも問題のない期間は最長どれくらいまでですか?

吉田:そういったデータはないので正直はっきりはわからないですね。
対象は異なりますが、タモキシフェン内服中の妊娠は催奇形性があり禁忌となっていますので、妊娠を目的とするホルモン療法の一時的中断(1〜2年)の乳癌再発リスクを評価する臨床試験が行われていて、もうすぐその結果が発表されることになっています。>  

(上記の研究について発表された試験結果はこちらからご覧いただけます)



原田:薬が体内から消えるのは計算できるんです。薬にはそれぞれ半減期といって、血液中の薬の濃度が半分になる時間があってその5〜6倍の時間が経つと薬は血液中からすべて消えるというのは理論上言うことが出来ます。あくまでも血液中からすべて消えるというだけで、効果を現す場所からもすべて消えてしまうという訳ではないのです。
また、1日のめなかったけどいいや、がどんどん続いてしまうと体内の薬の量が減っていき、効果がない状態になってしまう恐れもあるので、僕たち薬剤師は指導通りに服用して下さいとしか言いようがないのです

吉田:うん。出来る限り空くことがないように管理して毎日飲もうねって言うしかない。
百村さんが先ほど薬が足りなくてとおっしゃられていましたが、その期間の副作用はどんな感じでしたか?

百村:個人的な体感ですが、若干副作用が緩くなったと感じました

吉田:なるほど。
板倉先生にお聞きしたいのですが、ホルモン療法による副作用が強い方の診療で、ホルモン剤を休薬した方がいいのではないかと感じるケースはありますか?

板倉:ホルモン剤の休薬に関しては乳腺の主治医が判断することですが、僕の立場からはホルモン療法の副作用は漢方と生活指導でだいたいは何とかなると考えています。
化学療法は別ですよ。漢方よりよほど強いのが化学療法なので減薬しないとどうしようもない場合がありますので。
でも、ホルモン療法だったら副作用の症状を一気にゼロにはできなくても軽減することはできるから、ちょっと一緒に頑張っていこうって話していることが多いです。



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